ソラナ(SOL)のインフレシステムを大幅に変更する提案が、ステークホルダーによって否決された。しかし、ネットワークのガバナンスプロセスにとっては大きな前進と評価されている。

「技術的には否決されたものの、ソラナのエコシステムとガバナンスプロセスにとっては大きな勝利だった」と、マルチコイン・キャピタルの共同創設者であるトゥシャール・ジェイン氏は3月14日に Xでコメントした 。

Dune Analyticsによると 、提案SIMD-228には910のバリデーターが参加し、ステークされた供給量の約74%が投票を行った。しかし、賛成票は43.6%にとどまり、反対は27.4%、棄権は3.3%だった。可決には投票参加者の66.67%以上の賛成が必要だったが、得票率は61.4%にとどまった。

ジェイン氏は、この投票が「参加者数と市場規模の両面で、あらゆるエコシステム、チェーン、ネットワークにおける最大の仮想通貨ガバナンス投票だった」と指摘した。

「これは重要なスケーリングのストレステストだった。技術的なテストではなく、社会的なストレステストだった。そして、異なる意見や利害が入り混じる中でも、ネットワークはそれに耐えた」

ソラナの 公式Xアカウント は、「SIMD-228の投票率は、過去100年間の米国大統領選挙のどれよりも高かった」と主張している。

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SIMD-228 final vote count. Source: Dune

SIMD-228とは?

SIMD-228は、ソラナのインフレシステムを固定スケジュールから、より市場に基づいた動的モデルに変更する提案だった。現在のインフレ率は、年率8%からスタートし、毎年15%ずつ減少し、最終的に1.5%に到達するように設計されている。

この提案では、インフレ率をステーキングの参加率に応じて調整し、固定の減少スケジュールに縛られず、より柔軟な仕組みにすることを目指していた。 一部の推計によると 、新しい仕組みではインフレ率が最大80%削減される可能性もあった。

Solana Compass によると、ソラナのインフレ率は現在4.66%であり、総供給量のうちステーキングされているのはわずか3%にとどまっている。

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ソラナのインフレ率スケジュール. Source: Helius

この提案が採用されれば、いくつかのメリットが 期待されていた 。例えば、ステーキングの参加率が低下した場合には、インフレ率を動的に調整することでネットワークのセキュリティを強化できる。また、固定されたスケジュールではなく、リアルタイムのステーキング状況に応じて柔軟にインフレ率を調整できる仕組みとなるため、市場の状況に適応しやすい。さらに、SOLのDeFi活用を促進し、より積極的な利用を促す効果も期待されていた。

一方で、いくつかの懸念点もあった。インフレ率が低下することで、小規模なバリデーターの収益が減り、ネットワークへの参加が難しくなる可能性がある。また、新しいモデルの導入によりシステムの複雑性が増し、運用の負担が大きくなることも考えられる。さらに、ステーキング率が急激に変動した場合、予測しづらい不安定な状況を生むリスクも指摘されていた。

この投票結果を受け、SOLの価格には大きな変動はなかったが、執筆時点で前日比1.5%下落し、125ドルを割り込んでいる。

ただし、SOLは過去2カ月で約60%の下落を記録しており、これはミームコインバブルの崩壊による影響が大きい。さらに、ソラナネットワークの収益も90%以上 減少しており 、ミームコインの発行や取引によって支えられていた市場が冷え込んでいることが示されている。